Data · 2001–2026 · 91 earthquakes

地震が来たら株は上がるのか

大地震のあと、防災や建設の会社の株が急に上がる——という話は昔からあります。 本当なのかを、2001年から2026年までの震度6弱以上の地震91件と、 関連10銘柄の実際の株価で調べました。
結論から言うと、急騰は本物です。ただし、それを取れるかは別の話でした。

株価: Yahoo Finance 日足(株式分割・併合なしを確認済み) / 地震: 気象庁「主な被害地震」・tenki.jp

不動テトラが地震の翌営業日に高値をつけた回数(16回中)
寄り付いてから引けまでの平均。上がるのは「開く前」に終わっている
東日本大震災で不動テトラが5営業日でつけた上昇率

銘柄ごとの反応

地震の翌営業日、前日終値からどれだけ上がったか(16件の平均・高値ベース)。赤いバーが長いほど大きく反応しています。

はっきり分かれました。地盤改良や地盤調査の会社は大きく動き、防災用品の会社はほとんど動きません。 帝国繊維(消防ホース)やモリタHD(消防車)は、災害で売上が伸びる会社であっても、 株価は地震にほとんど反応していませんでした。

地震ごとの反応

色が濃いほど大きく上昇。「反応日」は地震のあと最初に売買できた日です。

3つの実例

平均では見えない、実際に何が起きたか。

それで、買えば儲かるのか

上がるのは「市場が開く前」なので、普通は買えません

検証で一番はっきりしたのはこれでした。値上がりの98%が、前日の終値から翌朝の寄り付きまでの「ギャップ」で発生しています。 寄り付いてから引けまでは平均−0.05%で、ほぼ動きません。

つまり朝ニュースを見てから買っても遅い。 そして大きな地震ほど夜中や休日に起きるので、そもそも市場が閉まっています。 東証が開いているのは平日の9:00–11:30と12:30–15:30だけです。

一番上がった日は、一番買えない日でした

東日本大震災の翌営業日、不動テトラは始値も高値も安値も終値も910円—— ストップ高で値が動かず、出来高は前日の3割に落ちました。 買い注文を出しても約定しません。一番上がる日に、一番買えない。

そして、その先で戻します

地震で買われた銘柄は、40〜60営業日かけて日経平均に対して中央値で約2.9%負けます(359件・統計的に有意)。 同じ銘柄・同じ期間のランダムな日と比べても差が出たので、地震固有の現象です。

これは金融の研究とも一致します。Chan (2003) は「ニュースを伴う上昇ショックは反転する」と、 Barber & Odean (2008) は「個人投資家は注目を集めた銘柄を買い越し、それらは以後アンダーパフォームする」と報告しています。 急騰した銘柄に飛び乗ると、数ヶ月かけて負ける——という、よく知られたパターンでした。

結論

現象は実在します。でも、そこから利益を取り出す方法は見つかりませんでした。 実際に売買できる形(成行で買えるタイミング、実際に払う価格)で計算すると、 優位性は取引コストに飲まれて消えます。

ちなみに同じ期間、日経平均を買って何もせずに持っていた場合は+438%でした。 地震のたびに売買する戦略は、それに遠く及びません。

被災地を支援したいなら

株を買っても、被災地にも企業にもお金は届きません

よくある誤解なので、はっきり書いておきます。 証券取引所で株を買うのは他の投資家から買うことです。 あなたが払ったお金は、株を売った投資家に渡ります。企業には1円も入りません。 企業に資金が入るのは、新規上場(IPO)や増資のときだけです。

「関連株を買って応援する」という行為は、気持ちとしては分かりますが、 支援としては機能しません。届けたいなら、届く方法があります。

  • 日本赤十字社の義援金 — 被災された方へ直接分配されます
  • 中央共同募金会(赤い羽根) — 支援活動をするNPO・ボランティア団体の活動資金になります
  • 自治体のふるさと納税(災害支援) — 返礼品なしで被災自治体に直接。手数料が引かれない仕組みもあります
  • 被災地の商品を買う — 事業者の売上に直接なります。株式と違い、これはお金が届きます

いずれも寄付先の公式サイトから、募集期間と使途を確認してください。 災害のたびに募金を装った詐欺が出ます。

DEVELOPER MODE

検証の詳細

検証手法と、公開版では省いた分析。

検証の作法

同じ地震では全銘柄が一緒に動くため、トレード単位で数えると独立性がなく p値が過大になります。 1地震=1サンプルで集計しました。 さらに訓練(2001-2016)/検証(2017-2026)で分割し、東日本大震災とその余震を除いても残るかを確認し、 同じ銘柄のランダムな日を対照群として比較しています。

検証の過程で「勝率が上がったように見えて消えた」ものが多数ありました。 不動テトラの勝率67%は2001年まで遡ると45%に、「M6.5未満」条件の78%は検証期間で51%になりました。 期間・銘柄・パラメータを選べば、いくらでも良い数字は作れます。